お気に入りゲームの話 魔導物語について
魔導物語は私が初めてプレイしたRPGです。このゲームの存在を初めて知ったのはぷよぷよの攻略本に掲載されていた記事からでした。
(その際掲載されていたのはPC-98版の画像だった為、リアル調の高頭身なキャラ達に凄まじいギャップが…^^;)
当時RPGといえば、FF・DQ等の様な2Dの俯瞰視点でフィールドマップを歩き回る作品しか知らなかった為、初めは視界の狭さに慣れず戸惑いました。
しかしオートマッピングシステムで迷う心配は大幅に無くなり、謎解きの大きなヒントになる事もありました。
(尤もマップをよくよく見ないと先に進めないタイプの謎解きは、魔導に限らずこの手の3DダンジョンRPGではよくある手法ですが)
独特のゲームシステム、コミカルで個性溢れるキャラ達、ゲームを盛り上げるボイス等…、すぐにこのゲームの面白さに魅了されました。
よく様々な所で述べられていますが、魔導物語(以下魔導)はぷよぷよ(以下ぷよ)を原作としてRPG化された作品ではなく、ぷよの方が魔導のキャラを用いたスピンオフ作品にあたります。
(はなまる、SS版等後期の魔導は『ぷよぷよRPG』を謳い文句にする等して、ストーリー・キャラ設定共にぷよの影響をかなり強く受けていますが)
元々は昔のパソコンゲームで、1989年に初めてユーザーの前に姿を現しました。(ぷよが発売され始めたのは1991年のMSX2・ディスクシステム版から)
但し初めはまだ単独のソフトとして制作された作品ではなく、かつてコンパイルが発行していたディスクマガジン『Disc Station』(以下DS)MSX2版に収録されていたゲームの1作でした。
可愛らしくどこか憎めないキャラが織りなす愉快なノリ、ファジーパラメーター(レベル・体力等のステータスが表立って公開されず、HP・MPやダメージ・回復量を数値ではなく抽象的な表現で書かれたテキスト・顔グラフィックの表情・BGMの変化で表現する)、サンプリングボイス(魔法・アイテム使用時や敵の出現・攻撃時等に一言流れる音声)といった本作の顔とも言えるシステムは当初から既に健在でした。
(しかしオートマッピングは未搭載…方向音痴だから絶対迷うだろうな;)
多くのユーザーに好評を博した魔導は、グラフィック等を書き直し新たなエピソードを加えた『魔導物語1-2-3』としてソフト化され、後々に数多くの移植作品・派生作品を生み出した根強い人気を誇るシリーズとなりました。

それでは1-2-3各エピソードのあらすじ(+α)を紹介します。(※ちょっとネタバレあります)
魔導物語1
魔導幼稚園に通う6歳(作品によっては5歳)の主人公が、園内にそびえ立つ塔を舞台に卒園試験に挑むエピソード。
唯一受験資格を得た主人公は友達からの応援を受け、たった一人で手強いイリュージョンモンスターや多彩なトラップに立ち向かい、塔内に隠された3つの『魔導球』を全て見つけて出口を目指していきます。
ゲームギア・スーパーファミコン・メガドライブ・PCエンジンと多くの家庭用ゲーム機に移植・リメイクされた為、プレイした事があるファンも多いかと思います。
(SFC版こと『はなまる大幼稚園児』では受験資格を手に入れるまでのエピソードが主軸となっています)
このエピソードではアルルの幼くも勇気があって凛とした所(でもどこか抜けた面も)、そして後にシェゾやサタン達から一目置かれる程の魔導士としての才能を秘めている事が明らかになっています。
(但し選ばれしエリート・優等生といったキャラ像はぷよのメインターゲットである児童・ティーン層に受けにくいと思われたのか、若しくはぷよの漫才デモでのとぼけたやり取りのイメージが強まったからか、潜在的な資質は高いものの基本落ちこぼれといったキャラ付けが後々になされ、性格面の方も明るさ・無邪気さが目立つ様になります。
その結果、初期の『年相応に生意気で未熟な面を持ちつつも度胸と優しさも兼ね揃えた主人公』よりも、現在の『能天気で子どもっぽいけれど素直で誰とでも友好的なアルル』のイメージの方が、公式・ユーザー問わずすっかり定着してしまいました)
それだけでなく魔導士という職種に就く事の厳しさもさり気無く描写されています。
幼稚園の卒園試験でさえ受験資格が必要だもんなぁ(MD版では筆記試験で鉛筆転がしながら答えを書いた結果、偶然全問正解で合格して受験できるようになりましたが)
はなまるでの魔導幼稚園を見ても、間口が広い教育の場(地元だけでなく離れた地域に住む児童も受け入れている)でありながら、認定書を手に入れるまでの過程が(ももんが・川下りといった交通機関はあるものの)マップ中をあちこち探し回らなくてはならないという未就学児対象にしてはハードなもので、やはり1人しか受けられなかったし。
という事は幼稚園でも留年するって事?しかも主人公以外全員が…(厳しい…それでも応援する子ども達はかなり健気かも^^;)
ただデモを見る限りアルルより年上らしい子どもの姿が無い事を考慮すると、修了証明または卒業資格・証明を得ずに園を出るという可能性もありそうですね。
(それも結構厳しい;しかし幼稚園という段階、魔導士としての教育を受けていないと思われるルルーが後の作品で魔導学校の生徒になった点や、ノベライズでは忍者までもが在学・卒業した点から義務教育として扱っていないと想定しています)
現実のお受験なんて目じゃ無い程の合格率の低さで、しかも不合格=死亡という事もありうるのか…;(PC-98版は敗北=死亡扱いになる為)
魔導士への道のりは正にかなり遠いです(多汗)

魔導物語2
16歳になった主人公は魔導学校(古代魔導スクール)に向う旅(入学試験として乗り物を使わず自身の力でたどり着かなければならない)の途中、魔力を狙う魔導師に遭遇し地下牢に捕らわれてしまいます。
牢内を探索中、おいしそうな鳥…ではなくミイル・ベンジャミンにナンパ…もとい取引を持ちかけられ、伝説の杖『ウラノススタッフ』と引き換えに『ルベルクラク』という宝石を渡すと口約束しました。
出口で待ち構えていた魔導師(作品によっては手下も立ちはだかる)を倒して脱出に成功した主人公は、ルベルクラクを手に入れる為ライラの遺跡へと足を踏み入れます。
侵入者を試すかのように置かれた罠やアイテム、ダンジョンの主と思われる者による意味深なメッセージ、壁に描かれた奇妙な生物の画、果たして遺跡の奥深くには一体何が…?
恐らく魔導で最も重要なストーリーではないのでしょうか?先述したDS版魔導のエピソードでもあります。
(魔導士の卵という主人公のキャラ設定、無二の相棒登場、シェゾやサタンに付きまとわれる要因、ルルーに嫉妬される切欠、自ら作り出した計画に他者が挑むのを楽しむサタンのポジション等、後の作品に大きく影響を受けた要素が幾つか見受けられます。ちなみにDS版が第1作にも関わらず2話目にあたるのはスターウォーズの影響からとの事)
ライラの遺跡ではサタン様のカーバンクルへの愛が分かります(笑)あとかなり自分本位なラブコールも(更に笑)
宝石を使った例の仕掛けは元々遺跡に存在していた(ルベルクラクorカーバンクルがライラ族に崇められ祀られていた)のか、それともサタン様がカーバンクルに肖って造った(塔をロケットに改造したり建設会社を立ち上げたりした彼なら造作も無いでしょう。GG版の高速エレベーターは絶対彼だろうな/苦笑)のか、想像するのもなかなか面白いかも?
今では見た目2枚目・言動3枚目でお馴染みなシェゾも、当時は数多くの部下を抱えたギャグ要素一切ナシのボス的存在でした。
作品によっては本来終盤に出てくる闇竜(ダークドラゴン)まで従えている所を見る限り相当な実力だったのでしょう。
でもMSX2版では意外と弱かったなぁ…(ばよひひひーの反射ダメージであっさりばたんきゅ〜させました^^;)
ちなみにウラノススタッフはその後ぷよ通の漫才デモでパキスタが売り出していました。しかも値段はぷよ地獄(爆)…本当に伝説の杖?

魔導物語3
カーバンクルと共に魔導学校への旅を続ける主人公。その様子をサタンに思いを寄せているという女性に見られ一方的に絡まれてしまいます。
どうやらサタンのペットだったカーバンクルが一緒にいる事で、主人公が彼と結婚したと誤解している様子。主人公の言い訳も虚しく女性は呪文を唱え始め、牛頭の大男ミノタウロスを呼び出してしまいます。
これは敵わないと逃げ出す主人公。しかし夢中で走っている内に、入った者は生きて出られないと言い伝えられている『迷いの森』の中へ入り込んでしまいました。
親切な魔物のお陰で何とか脱出できたものの、途中氷の魔法を使い過ぎた所為で手がしもやけに。ところが店に行っても薬は無く、材料となる石は洞窟へ行かないと手に入らないと言われます。
しもやけを治す為主人公は魔物が住み着く洞窟へと入っていく事になりました。
2の数日後のお話。先にGG版IIIをプレイしていた為、原作のエピソードを初めて知った時には「こんなシリアス寄りな話だったなんて…」と驚きましたよ。
(しかしそんな世界観の中、主人公が洞窟に潜り込む動機がしもやけというのが何とも魔導らしい/笑)
このエピソードには人間と魔物との相容れない確執というテーマが前面に押し出されており、主人公が魔物に助けられる場面でも互いの関係が完全に和解された訳でない(心を許したのは主人公に励まされた魔物の子とその父親のみ。しかし人間全体に対して気を許してはいない)という部分や、魔物が人間に対して憎しみの言葉をぶつけるようなシーンからもとれます。(ダンジョンに常駐している商人がある魔物にやられたと思われる場面は意外とショッキングでした;)
逆にシリアスすぎた背景故に、GG版ではストーリーが大幅に変わったのでしょうね。
初期のルルーは魔法を使う者(召喚士?)でしかも戦う相手ではなかったとは…。だから初代ぷよではボイスが無かった訳か。
当初はまだ魔力が無いという設定は考えられていなかったとか?(格闘技の使い手というキャラ付けが明確になったのはARSから)
洞窟を根城にする点やキツ目の顔立ちでぐっと大人びた容姿、そしてエンディングでの振舞いから、この作品の彼女はワガママなお嬢様というよりは姉御肌の女ボスといった感じのキャラとして描かれています。
テーマといいルルーと魔物の関係といい、ぷよの世界観が浸透した現在ではできない話ですね。(コンパイル最後の魔導となったサターン版で今まで戦ってきた魔物とパーティ組む事を考えると感慨深いです)
しかし2にも言えるけれどアルルに降りかかる不幸の原因が全て運命の悪戯というのが何とも(笑)
ミイルに会わなければ(または食べておけば←オイ)サタンに絡まれずに済むし、しもやけにならなければ何事も無く(ルルーと再会せずに)旅を続けることが出来たのに…。
でもそうじゃなかったら話がつまらないですもんね♪(^−^)

DS版・MSX2版の段階ではまだ主人公の名前は定められていませんでした(当時コンパイル間では『魔導の女の子』・『A子』・『らっこ』等自由に呼ばれていた様子)
ストーリーをざっと見てみると、従来の典型的なRPGとは違う部分が多々見られますね。
主人公が世界を救う・巨悪を打ち砕く等といった使命を持つ勇者・英雄ではない(目的が学業の為だったりダンジョンの脱出だったりとあくまでも個人的な理由から)
ボスは主人公の行く手を阻むものの世界に恐怖を及ぼす存在ではない(こちらも試験の課題という役割の他、后探し、恋敵の排除といった個人的な理由で立ちはだかる)
通常攻撃(武器で戦うコマンド)が無い。
武器・防具を売買・装備するという概念が無い(杖やシールド等は存在するもののあくまでもステータスを一時的に上げる補助アイテム扱い)
…等など。制作スタッフが抱いていたと思われる従来のRPG観に対するアンチテーゼが感じられます。
その後続編にあたる作品は『はちゃめちゃ期末試験』しか出ていません(但し『魔導4』では無い模様)
(元祖魔導を開発したスタッフさんによると、当時正式な続編を構想したものの、退職なさった為実現されなかったそうです。
9部作構成となり、今となっては曖昧な登場人物たちの設定や人間関係が明らかになる筈だったとか…どんな展開のストーリーで進んでいたのか気になりますね)
和議申請後に発行された小説『真・魔導物語』も魔導の続編という位置づけで書かれた作品ですが、ゲームとは世界観が大幅に異なっています。
(未読の為詳しくは語れませんが、各魔導・ぷよシリーズが一つの物語に繋がる世界観の下、各キャラの設定も改変・統一されシリアス気味な内容みたいですね。
無かった事にされるよりはマシなものの作風やノリがバラバラな各作品同士を繋げるのは無理があるような気が…そういったこだわりや縛りのない所もまた作品の魅力だと思っていたので尚更)
その他に魔導の名を冠した(移植・リメイクを除いた)RPG作品は、1-2-3より過去の時系列を舞台とした『A・R・S』、『道草異聞』・『魔導師の塔』・i-mode版といった番外編作品、これまでとは世界観を一新させたセガサターン版があります。

21世紀に入って『MSXマガジン永久保存版2』に収録されたMSX2版1-2-3をプレイしましたが、初期の魔導はダーク路線というか殺伐とした世界観の下で描かれていたんだなと感じました。
何しろ魔力を奪う目的で人を攫う存在、呪いで右を向けなくなるというイベント、「猿の手」・「亀の心臓」・「中指の骨」といった黒魔術的な名称のアイテム等、「おちゃらけ」という言葉とは縁遠い単語が多用されているのですから。
(当時のPCユーザーであるアダルト層を意識して制作されたという98版魔導を見れば分かるけれど、絵をリアルにしてギャグが無かったらもっとシリアスでグロい展開になっていた筈)
それでもコミカルなゲームだと思えるのは、暗さを感じさせない主人公のキャラと愉快な会話の展開、ちょっと不思議で笑える小さなイベントや敵モンスターのユニークな行動等、コンパイルさんがユーザーのツボを抑えた、まさに「の〜みそコネコネ」(笑)なノリやエッセンスをゲームに散りばめている為でしょう。
その為プレイ中、緊張感と脱力感のバランスの取り方が絶妙だなと感じました。
(しかし後半は悪い意味でハラハラします…経験玉を奪うウィザードや体が次々と崩れていくゾンビとかばよばよが逆効果なドラゴンとか;)
現在ではDS版・『1-2-3』(MSX・98版共に)・『A・R・S』とパソコン版の魔導が全て限定ながら復刻され、ブログや動画投稿サイト等でプレイ記・動画を目にする機会が増えてきた為、ぷよのルーツとなった魔導に興味を持つ人が増え知名度が更に上がる事を願っています。